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手軽に農業体験―愛され普及 体験者1000万人超へ/JAグループ「バケツ稲づくり」

2017.12.15

子どもや一般の消費者に稲の栽培を体験してもらおうとJAグループが提供する「バケツ稲づくりセット」が、食農教育の“教材”として定着している。30回目の配布を迎える2018年、体験者は1000万人を超える見通しだ。バケツに土を入れて水を張れば、庭やベランダなど場所を選ばず米作りを体験できる手軽さが売りだ。種もみから稲を育てながら成長を観察できるため、授業で活用する学校も多く、全国に普及している。

無償提供 良い教材に

米の消費量が減少を続ける中、JAグループは米飯を中心とした日本の食生活への関心を高めようと1989年、農家でない人も手軽に栽培できる稲づくりセットの配布を始めた。

バケツを使った米作りは、昭和初期から各地で取り組まれていたという記録も残るが、栽培に必要な種もみや肥料をセットにして本格的に提供を始めたのは、JAグループが初めてだ。セットは「コシヒカリ」の種もみと肥料、栽培マニュアル、名前の記入シールの一式で、学校など教育機関、個人に無料で提供し、費用はJAグループが負担する。

地域と絆強く

各地のJAの青年部や女性部が子どもたちにバケツ稲づくりを指導するなど、地域との絆づくりや社会貢献にも一役買っている。2017年は約37万セットを配布、18年は33万セットを提供予定で、累計の配布数は1000万セットに達する見込みだ。活動を推進するJA全中は「長年続けたことで、教育の現場で認識が広がった」(統一広報・よい食推進課)と実感する。

札幌市の北海道手稲養護学校は昨年から、幼稚部と小学校5、6年生の食育として始めた。校内のテラスで栽培し、子どもたちは稲が成長して色が変わっていく様子を見守った。特に、入院生活を送りながら車椅子で通学する子どもたちは屋外での活動が少なく、稲の成長を間近に感じられて大喜び。「お米が大きくなりますように」と手を合わせて願う子もいたという。道添奈美路教諭は「体験がとにかく楽しかったようだ」と手応えを話す。

米へ愛着育つ

群馬県高崎市立東部小学校は今年度、5年生の総合的な学習でバケツ稲づくりを取り入れた。種もみからの栽培は教員も児童も初めて。夏休みは児童が当番で水管理と観察を続け、市や農家の応援も受けながら10月に収穫を迎えた。今後は家庭科の授業で収穫した米を炊き、みそ汁を作って味わう予定だ。加藤久雄教諭は「子どもたちが全て管理して観察し続けたことで、稲や米への愛着が湧いたようだ」と学習効果を感じている。

子どもだけでなく、消費者への食農教育にも一役買う。東京都調布市で弁当や米を販売する「おむすびてしま」の手島章さん(77)は「日本の主食に関心を持ってもらいたい」と、店先でバケツ稲を栽培する。来店客にもセットを配り、コミュニケーションにも活用する。今年産の“バケツ米”は「食味はまあまあ」と満足げだ。

セットの申し込みは、JAグループや学校など団体が来年1月から。個人は3月から。JAグループホームページで受け付ける。

田んぼ実習も併用を 赤堀料理学園・赤堀博美校長の話

子どもは何でも体験することが大事。都会では土に触れたことのない子もいる。バケツ稲づくりは、食べ物が簡単にできないこと、命の大切さ、自然の豊かさなど、あらゆることが体験できる。

できれば、田んぼでの体験と合わせて地域と学校が協力することが重要だ。近年は海外で日本食が注目され、日本人よりむしろ外国人の方が米に関心を持っているように感じる。バケツ稲づくりを通じ、消費者が日本食の基本であるご飯を見詰め直すきっかけにしてほしい。

掲載日:2017/11/16(木) 掲載元:日本農業新聞 掲載面:総合社会